食育の難しさを痛感

「食育」に情熱をかけても成果が上がらない!

保育所の栄養士として勤め始めた頃、「食育」という言葉を日々呪文のように唱え、保育所の栄養士の本分であるとの思いから、園児達への関わりを常に模索していました。

食育計画書も小まめに見直し、もっと子供達に「食」に興味を持ってもらいたい、好き嫌いをなくしてもらいたい、、、と食事時間は園児が食べている様子も見に行き、声かけも熱心に行っていました。子供達に栄養のことを理解してもらいやすくするようにキャラクターを用いた媒体作りもしました。

しかしながら、保護者との連絡ノートのやり取りで「家では野菜をあまり食べません」「偏食が多くて困っています」といった記載は一向に減らず、保育所ではしっかり食べられる子供が家庭ではあまり食べられないということも多々あるようでした。

保育士に相談したところ、

「同じ歳のお友達と一緒に食べるからつられて食べるということもあるけれど、家庭での食育に問題があることが多い。食育というのは子供へのアプローチのみならず保護者や家庭への働きかけが必要」

「いくら子供に野菜が身体にとって大切な食材だと伝えても、家で出てこないものは食べることはできない」

「栄養バランスが大切だと頭で理解していても、実際それを食事の形にする具体的な方法を知らない親は意外と多いもの」

とのことでした。親に対しての食育と言われても学校では具体的な方法は教わっておらず困惑してしまいました。

 

 

親への食育の取り組みを

保育所に子供を預けている親は共働きであり、多忙でありあまり家庭での様子をゆっくり聞いたり、食事内容まで把握したりすることは難しいのが現状です。そこで、まずアンケートを実施してみることとしました。家庭で困っている食事の悩み、栄養相談を受け付けました。そこで、出た意見を栄養だよりにまとめて配布することにしました。それを読むことで他の保護者も参考にできたようです。また、色々やってみたいけれど、料理のレパートリーが少ないという意見も多くあったので、定期的に保育所で人気のレシピを配布し、年度末にはそれを1冊の冊子のようにまとめて配布することも行いました。

また、保育士の提案で「半日保育士体験」の取り組みも行いました。半日保育士と同じことを親にしてもらい、子供との関わりや活動量を見直すきっかけにし(動くことでお腹をしっかり空かせ、しっかり食べさせることにつなげる)、そしてその後保育所の給食を実際食べてもらい食についての指導を保護者対象に行いました。

また、食事後の歯磨きについてもセットで話をするようにしました。

その場では、栄養士→保護者という一方的な指導ではなく保護者同士の交流や悩み相談の場にもなりました。同じクラスの保護者同士の交流会にせず、様々な年齢のクラス混同にすることで「うちの子も○歳の頃はこうだったからこんな風にして食事に工夫した」「○歳の時はこんな風にするとうまくいった」などその年齢の子の育児を経験済の親の話しは特に参考になるようでした。

また、交流会の場で

「栄養バランス云々の前に仕事が忙しくて夜はどうかすると惣菜ばかりになる」

「自分が夜勤の仕事だと主人が子供達連れて外食することが多くなる」

「朝もバタバタして朝食を作ることができず保育所に連れて行く車内で菓子パンを食べさせている」

といったような現実的な話しも飛び出し、それぞれの家庭や環境に合わせたアプローチ法を考えていかなくてはならないと理解できました。

 

食育というのは子供へのアプローチではなく、その親へも働きかけることなのだと学びました。

また、その家庭に見合った方法で細やかな指導が必要だということも痛感しました。